臓器移植の基礎知識
臓器移植について
臓器移植は、病気や事故によって臓器の機能が低下し、移植でしか治らない人に、他の人の臓器を移植し、健康を回復させる医療です。
健康な家族からの肺・肝臓・腎臓などを提供する生体移植と、亡くなられた人(脳死後または心臓が停止した死後)からの臓器提供による移植があります。
移植できる臓器は、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸及び眼球(角膜)です。
もしものとき、誰かの命を救うことができるかもしれないし、助けてもらうかもしれない。
わたしたち一人ひとりが、今、臓器提供について考え、家族と話し合い、自分の臓器提供に関する意思を表示しておくことが大切です。
わたしたちの体は、心臓、肺、肝臓、腎臓などのさまざまな臓器がきちんと機能して健康を保っています。
しかし、病気や事故によって臓器の機能が低下したり、臓器不全に苦しんでいる患者さんが多くいます。
臓器不全の患者さんで、移植による健康回復に望みを持ち、日本臓器移植ネットワークに登録して待機している人は、約15,000人いますが、一方で、死後の臓器提供によって移植を受ける人は、年間約400人程度(眼球を除く)です。
臓器提供に関する意思表示について
臓器を提供するという意思は、15歳以上の人が書面で表示することができます。提供したくないという意思は、15歳未満の人でも書面でなくても表示することができます。
脳死及び心臓が停止した死後のいずれでも、ご本人の意思が不明な場合(15歳未満を含む)、ご家族の承諾があれば提供できますが、日頃から臓器提供について考え、家族と話し合っておくことが大切です。
臓器提供までの流れ
STEP 1. 病院に入院(病状説明/臓器提供についての情報提供)
事故や病気による脳障害などで入院した人に対して、最善の救命治療を行ったにもかかわらず、回復の可能性がなく、救命が不可能であると診断された場合の終末期医療の選択肢の一つとして、臓器提供があります。
STEP 2. 移植コーディネーターによる説明
臓器提供を希望するご本人の意思表示があるか、又はご本人の意思が不明な場合で、ご家族が臓器提供について説明を聴くことを希望するときには、主治医などからの連絡を受けて移植コーディネーターが病院を訪れ、説明を行います。
STEP 3. 家族の意思決定
説明を聴きたくないと思われた時は、いつでも断ることができます。
移植コーディネーターから説明を受けた後、十分に話し合いをして臓器を提供するかどうかをご家族の総意として決めます。
提供しないと判断しても不利益な扱いを受けることはありません。
STEP 4. 脳死判定
臓器提供が決まれば、脳死判定が行われます。脳死判定は法に基づいた厳格な方法です。2回目の脳死判定が終了した時刻が死亡時刻となります。家族が希望すれば脳死判定に立ち会うこともできます。
心臓が停止した死後の臓器提供では、法律に基づく脳死判定を受けることはありません。
STEP 5. 移植を受ける患者さんの選択
移植を希望する人は、日本臓器移植ネットワークに登録されています。
提供される臓器が最も適した患者さん(レシピエント)に移植されるように医学的な基準に従って、コンピューターを用いて、公平に選ばれます。
STEP 6. 臓器の摘出と搬送
レシピエントが選ばれると、提供する臓器の摘出手術が行われます。摘出手術は、3~5時間かかり、摘出された臓器は移植手術を行う施設に迅速に運ばれて移植を待つ患者さんに移植されます。
STEP 7. 身体のお戻し
摘出手術の後に、お身体は家族の元に戻ります。
傷跡はきれいに縫い合わせて、清潔なガーゼなどを当て、手術による創(あと)がわからないようにします(眼球提供の際は義眼を入れます)。通夜や葬儀など大切な方々との時間を過ごしていただけます。
臓器移植Q&A
脳死とは、脳全体の働きが無くなり、どんな治療をしても回復することはなく、人工呼吸器などの助けがなければ心臓が停止してしまう状態です(心停止までに、長期間を要する例も報告されています)。
脳幹の機能が残っていて自分で呼吸できることが多く、回復の可能性がある植物状態とは全く別のものです。
臓器移植法に基づく脳死判定は、脳死後に臓器提供を行う場合に実施します。
臓器提供の意思を表示することには、年齢の上限はありません。高齢の方でも病気で薬を飲んでいる場合でもどなたでも記入していただけます。 本人の生前の意思や家族の承諾によって行われるものですが、死後に実際に臓器提供できるかは、様々な条件の中で決まります。
例えば、脳死で提供する場合では、事故や病気で運ばれた病院が、ガイドライン上で定められた臓器提供施設であること、脳死とされうる状態であることなどの確認が必要です。
また、がんや全身性の感染症で亡くなられた方は提供できないなどの条件もあり、実際に提供できるかどうかは医学的検査をして総合的に判断します。
病院で亡くなった場合に提供できる可能性があります。心臓が停止した死後の提供は、必要な体制が整備されていることが前提となりますが、手術室がある病院ならどこでもできます。脳死下の提供は、大学附属病院などの高度な医療を行える施設でできます。
「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)により大学附属病院と日本救急医学会の指導医指定施設、日本脳神経外科学会の基幹施設又は研修施設、救命救急センターとして認定された施設、日本小児総合医療施設協議会の会員施設の約900病院に限られ、かつ必要な体制が整備されていることが前提となります。
入院している病院で、数時間(3~5時間)の摘出手術をした後にご家族の元に戻ります。臓器を摘出するための傷ができますが、きれいに縫い合わせて、清潔なガーゼで覆い、外から見ても傷がわからないようにします。 また眼球提供の際は、義眼を入れますので顔はほとんど変わりません。
厚生労働省で定められた移植希望登録者(レシピエント)選択基準により選ばれます。
臓器提供者(ドナー)の血液型やHLAなどの適合条件や優先順位など、各臓器ごとに定められている医学的条件によって、公益社団法人 日本臓器移植ネットワークに登録されている移植希望登録者の中から最も適した方が選ばれます。
個人差がありますが、移植後は免疫抑制剤などを服用し、拒絶反応や感染症に注意すれば、多くの方は健康な人とほぼ変わらない生活を送ることができます。
中には、手術後再びオリンピックに出場し銅メダルをとったり、プロサッカー選手として活躍している人もいます。
あくまでも善意に基づく無償の提供ですので、臓器提供者の方には提供に関する費用は一切かかりません。
また、葬儀の費用や謝礼が支払われることもありません。臓器を提供した場合、厚生労働大臣から感謝状が贈られます。
インターネットで親族優先提供の意思を登録するか、健康保険証や運転免許証、マイナンバーカードの意思表示欄や意思表示カードに、臓器を提供する意思(1か2に○)に併せて書面により「親族優先」と表示しておくことが必要です。「○○さんにしか提供したくない」という、提供先を限定する意思表示があった場合には、親族の方も含め、臓器提供が行われません。
詳細は、必ず、公益社団法人 日本臓器移植ネットワークのホームページなどでご確認のうえ、記入してください。
提出の必要はありません。意思を表示したら家族にも自分の意思を伝えておきましょう。
臓器を提供する書面による意思表示は15歳以上が有効ですが、提供しない意思は15歳未満でも有効です。
本人の意思をより確実にするためにも(特に親族優先提供を希望する方や臓器提供しない意思の方)、インターネットでの登録をおすすめします。
意思を登録すると、IDの入った登録カードが郵送されます。変更や削除は、いつでも可能です。